さわデザイン

エッセイ / Essay

 日常の気になることを、自分なりにかいつまんでコメント。
 多少偏った内容になるかも知れませんが、悪しからず・・・

04:オフロード車椅子製作記

舞殿と

地元秋祭り舞殿と父(下は砂利)

  病気、怪我などで身体機能を失った後は、それまでの生活を取り戻せる様にすることが大切で、一番のリハビリになると思います。
  田舎では、畑仕事、山仕事などに従事してきた方も多く、こうした場所は決まって荒地なのです。
  特に脳梗塞など、脳神経機能の低下、損傷に伴う身体機能の急激な変化では、それまでと同じ生活様式の刺激が、その後の機能改善に有効と考えますが、療養中の環境ではこうした場所に近くことすらできません。具体的には、畑や山などへ気軽に乗り込める車椅子があれば良いと思うのですが、介護用車椅子は、主に屋内仕様に限られている様で丁度いいものがありません。
  オフロードへ行ける車椅子は、競技用などでは存在するでしょうから皆無ではないのでしょうが、こうした用具は金額が高く、身体能力に伸び代のある若い方であれば導入検討に値するかも知れませんが、ごく一般的な高齢者がこの様な状況に成ったらハードルが高く、使用にまでは至らないのが実状だと思います。
  ちなみに、ネットで調べてみると、海外の製品には理想と思えるものがありました。しかし、本体サイズが日本人の体格に合っていなさそうなことや、一般的な車椅子乗車の自家用車には入らない大きさであること、それに輸入諸費用で金額が高くなることなどが、ニーズが有っても普及まで至っていない原因だと思うのです。

 

  さて本題ですが、父のリハビリの為に手始めに一般の車椅子にマウンテンバイク用の幅広タイヤを履かせたものを作ってみることにしました。普通に流通している自転車パーツが簡単に流用できるだろうと思った訳です。

  しかし、これがなかなか大変でした。様々なところが車椅子用にカスタマイズされていて、タイヤ交換だけといった訳にはいかなかったのです。車輪部分はハブ以外使えそうにありません。そこで、ひとつひとつ対応する部品を購入加工し組み直すことにしました。幸い、リムやチューブ、タイヤ、ニップルなどの部品は自転車用ということで、これらのパーツ代は安く抑えることができました。
  タイヤを交換すると、外径の違いでブレーキが掛かりません。これはスペーサープレートを自作し対応しました。さらに座面の傾斜が変わるので、前輪ユニットにも手を加えることにしました。丁度サスペンション内蔵のタイヤとホルダーが某車椅子メーカーから出ていましたのでそれに交換しました。ただしこちらは保守パーツ扱いなのでさすがに高額でしたが。
  座面も高くなり、オフロード性能は上がりましたが、重心が高くなると言うことは不安定にもなるのです。それは、それだけ揺れ易くなる訳ですので、ヘッドレストユニットを取り付けました。こちらもかなりの金額。おまけに何かの拍子で転げ落ちては危険ですので、シートベルトも購入、取り付けました。
  とまあ、なんやかんやで金額はベースの車椅子の3倍ほど掛かり、ようやく組み上がったのです。(完成 2022年7月)

  早速試してみますと、細かなところは気になりましたが、今まで入れなかった砂利道で使うことができました。ただ、予想以上に振動が有る様で、試乗する父の評判は良くありません。とは言っても、近所の神社の境内に入ることができ、無事参拝させることができましたので一歩前進だと思います。

  今後の課題としては、乗り心地と、乗り降りのし易さ、ブレーキの改善などです。また、もっと広く一般にも普及して欲しいのでカスタムメイドのパーツばかりじゃなく、一般的なパーツ構成となる様にすることも必要なのでしょう。しかしこれはフレームを初めから設計しなくてはならないのだと思うので大変です。
  現実は、在宅介護で時間が取れないことが、一番の課題でもあるのです。

  2023年7月20日 編

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03:福祉介護、擁護より自立支援を

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CSUN Conf. 2006 L.A.

  2006年3月、当時在籍していた会社の加盟する工業会のデザイン部会でロサンゼルスへ出張に行きました。そこでは障害者の自立支援製品の展示会などが行われており、その視察でした。
  日本では福祉、介護をする側の負担を軽減させる装置やシステム開発に重きを置きます。一方、個人主義が当たり前の欧米では、障害があっても可能な限り自立させるための装置やシステム開発にウェイトを置く様です。当時は、欧米の福祉や介護の考え方に感銘を覚えたものですが、今、父の介護に直面しまして、あれから少しも日本の方針に変わりがなく残念に思っている次第です。

  『困っている人を助け合いましょう』という、日本特有の共助の気持ち(共感)は大切で有り、失って欲しくない慣習です。ただ、社会の仕組み、公的な取組みという点では感傷的なスタンスだけではいけないと思います。もっと要介護者などに向き合い、『したいことは何ですか? そのために何が必要ですか?』と問う姿勢、『それができるように整備されたら、後は自身でできますか?』という促しも大切ではないかと思うのですが、いかがなものでしょうか?。

  人は歳を取り老いてくると、それに伴い身体能力も低下します。事故やケガで自由が利かなくなることだってあり得ます。いかなる状態になったとしても自身を尊ぶこと、または自立しようとすることを拒まない社会になって欲しいと願って止みません。

  あと余談ですが、福祉、介護問題は、一般的に介護、看護を仕事にしている業者(職員)への支援、助成が足りないことがクローズアップされがちで、要介護者本人は元より、それを支える家族や周囲へのケアまでは取り上げられることが少ないのが現状です。本来自立を促し、生活をする場所は一番身近な家族や仲間(周囲)がつくる訳ですから、そこが疲弊しきってしまわないような仕組み作りをお願いしたいとも思っています。

  2023年7月20日 編

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02:デザイン思考を身近に

あい

なにを考えてるんだか・・・

  職業柄、相手の立場に立って行動することが多い方です。それも経験のあることならたやすいのですが、無い場合は相手を観察して想像します。初めのうちはうまく行かなくても、観察-想像を繰り返し行っているうちにそれらしくなってきます。そうして、半ば相手に成り代わって思考していると、なんとなく問題点や解決作などが浮かんでくるのです。
  その次のプロセスとして問題解決策の実施となるのですが、デザイナー自身が実施するのならともかく、大抵は事業主様に行ってもらわなければならないことなので、わかりやすく説明をしてゆく必要が生じます。その時に言葉だけで伝わることは稀なので、絵だったり、図だったり、フローチャートだったり云々と様々な手段を駆使することになるのです。
  表層的な『絵を描くこと』だけがデザイナーの仕事と捉えられがちですが、デザイナーの本質の仕事は、『相談者(事業主様など)の抱える問題点の抽出と解決方法の具体的提案』なのです。まぁそう解説いたしますと、さぞかし自分のビジネスはうまく行ってるのでしょう? と思われるかも知れませんが、灯台下暗し、自分のことが一番うまく行っていないのが現状です。
  ちなみに、デザインとは解決策のプロセス(計画、設計)のことを指したり、解決策実施の結果(スタイリング、意匠)を指したりします。この辺の捉え方の違いも混乱の基になりますね。

  話を戻しまして父の介護に直面した時でも、このデザイナーの思考は様々なシチュエーション下で凄く役に立ちました。
  介護職ばかりではありませんが、よく観察して、想像して、気づいたことをやってみて、また観察して・・・。そうこうしているうちに次のアクションが見えてきて先回りできる。と言った感じで、あらゆる職種の方でも役に立つ思考プロセスだと思いますので、オススメです。

  2023年7月20日 編

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01:自分のブランドは愛して育てよう

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  何件か販促絡みの仕事をさせていただいてみると、折角のブランディングがもったいないなんてことがあります。たまにしかデザインに接する機会が無いような事業者が、次々とマークや書体、全体イメージを変えてしまっていた時にそれを感じます。特に食品系の回転の早い商品開発時に多い気がします。
  要は、ブランド力の向上は、ひとつひとつの積み重ねなので、イメージや図柄を変えるということは、その度にブランド構築の積みなおしをしている感じです。
  イメージの統一のやり方はいくつかあると思うのですが、人頼みだとすれば、同じデザイナーへ依頼することが良いと思います。また、シンボルマークやロゴタイプなどであれば、使い方マニュアルを作っておくというものもあります。

  デザイナーも多々おりますので一概では言えないのですが、私の場合は今ある事業主様の問題を、社内外の幅広い視点から検討し具体的解決策を提案する様に心がけています。そしてそれは、デザイン開発終了後も長期に渡って効果を上げる様に考えていますので、その場限り、一回限りの使い捨てだとするとすごくもったいなく思えるのです。

  そうやって何度かのプレゼンテーション(意識合わせ会議)を行い、せっかく創ったブランディング(シンボルマークやロゴタイプ、そしてその運用方法など)は、事業主様の商売の顔となる訳ですから、もっと大切に、もっと永く愛して扱って欲しいと思うのです。
  また、その後もトータルイメージを崩さない様にするために、長期に渡って同じデザイナー(デザインコンサル)との付き合いをお願いしたいとも思っております。

  2023年7月20日 編

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